ぜんそくと症状は似ていますが別の呼吸器病であり,喫煙習慣のまん延と高齢化に伴って今後ますます増えていき,2020年には全世界の死亡原因の第3位になるといわれている「COPD」についてご説明します。
COPDは進行性に気道狭窄(きょうさく)や肺胞の破壊をきたす怖い病気
COPDは,日本語では「慢性閉塞性肺疾患」といい,気管支の炎症や肺胞の破壊が混じり合って気道の狭窄(気道が狭くなり空気の流れが悪くなる)をきたす病気です。この気道狭窄は,ぜんそくと違って非可逆的(元どおりにならない)であり,通常進行性です。大気中の酸素の取り込みがうまくいかなくなり,進行すると慢性呼吸不全に至り酸素吸入が必要となります。そのため,早期に発見して対処することがきわめて重要です。
★原因の90%は「タバコ」
タバコをはじめとする有害粒子やガスが気管支や肺に慢性の炎症をもたらし,そこの上皮細胞や血管壁の破壊をきたし,COPDとなります。COPDは60才以上の男性に圧倒的に多く発症していますが,その年代層の人が青壮年期だった頃の日本人男性の喫煙率は80%以上だったためとされています。我が国のCOPD患者数は,予備軍を含めると1千万人以上といわれています。タバコは「百害あって一利なし」です。
★症状進行が緩徐なため発見が遅れがち
代表的な自覚症状は,1)体を動かしたときの息切れ,2)慢性のせき,たん(たんは粘り気があり,悪化時には膿がまじる),3)ときに喘鳴(ゼイゼイ),など。発作性に派手な症状をきたす「ぜんそく」と異なり,病状が徐々に進行するため発見が遅れがちです。
★スパイロ検査で早期発見を!
スパイロ検査(スパイロメーターを使った肺機能検査)は,COPDの診断に欠かせません。40才以上の喫煙者や息切れなどの自覚症状がある人は,COPDの早期診断のためにぜひ受けていただきたい検査です。
★COPD治療の基本は「禁煙」
最大の危険因子であるタバコを中止することが治療の根幹です。薬物療法としては,吸入抗コリン薬(スピリーバ、テルシガン),β刺激薬(吸入薬:セレベント,サルタノール,メプチンエアなど,貼付薬:ホクナリンテープ,経口薬:メプチン,スピロペントなど),テオフィリン薬(テオドール,ユニコンなど)等の気管支拡張薬が中心となります。呼吸困難の改善には,呼吸リハビリテーションが有効です。呼吸不全例では長期酸素吸入療法を行います。また,気道感染がCOPD急性増悪の主因であるため,インフルエンザや肺炎球菌のワクチン接種を行います。 |